成人矯正で
抜歯は必要か

成人矯正での抜歯について

抜歯が必要かどうかは症例によって
異なります

ヒトの歯は親知らずを含まずに、上顎14本、下顎14本の計28本あります。そして歯槽骨(しそうこつ)に植立した状態で存在しています。

この歯槽骨の長さをavailable arch lengthといいます。availableとは「利用できる」という意味です。全ての歯のサイズの合計をrequired arch lengthといいます。requiredとは「必須な」という意味です。
つまり、「骨 → 使える長さ」「歯の合計 → 必要な長さ」です。

矯正医が行う歯列模型分析にarch length discrepancy (A.L.D.)という項目があります。(使える長さ)から(必要な長さ)を引き算するのがA.L.D.です。
A.L.D. = (available arch length) – (required arch length) 単位:mm

この値が0ならばピッタリキレイに並び、マイナスならデコボコ、プラスなら隙っ歯を表します。マイナスの値が著しく大きい場合(例えば-4.0mmとか-6.5mmとか)、歯を無理なく並べるためには抜歯が必要となってきます。

さらに以下の条件を非抜歯で満たすことが出来ない場合、抜歯が必要になります

  • 治療後の安定した歯列と咬合

  • 健康な歯周組織の保持

  • 能率的な咀嚼機能

  • 調和のとれた顔貌

(C.H.Tweed)

逆に上記条件ほど厳しくない場合、抜歯せずに矯正治療を行う事が可能であるといえます。

「親知らず」は
矯正前に抜歯するべきか

こちらも症例によって異なります。
親知らずの存在が不正咬合に関与している場合は矯正治療前に抜歯します。親知らずの抜歯をされた方はお分かりだと思いますが、決して楽な抜歯ではないですよね?なぜなら、親知らずはまっすぐ生えている場合が少なく、骨の中に斜めに傾いて埋まっている場合が多いのです。

そのため、まっすぐに引き抜いてくることができず、歯茎を開き、骨を削り、親知らずを骨の中で分割して取り出してくるという、一種の摘出術に近い治療になります。当然、抜歯後はしばらく痛みが続いたり腫れたりします。

矯正治療で特に小臼歯を抜歯する場合、デコボコや出っ歯を改善した後、残った抜歯スペースは後ろの歯に手前に移動してもらってスペースを閉じます。後ろの歯が手前に移動するということは親知らずの手前にスペースが生まれるということです。すると、多少斜めになっていた親知らずならばひとりでに頭が出てきてくれる場合もあります。また、完全に埋まっていた親知らずであっても抜歯の際、手前に作業スペースがとれるため術式が矯正前に比べると簡単になります。もちろん、抜歯後の痛みや腫れも軽くて済みます。

当院の治療方針

まずは非抜歯を想定した
治療計画を立案

矯正医は治療計画を立案するとき、まずは非抜歯から考えます。分析の結果、上記でも説明しましたが、著しくスペースが足りない場合、Tweedが提唱する治療目標を達成できない場合に抜歯を選択します。

非抜歯で治療目標が達成できる場合はもちろん非抜歯で治療計画を立てます。また、奥歯をわずかに後ろに動かす(骨の限界があるため移動量はわずか)遠心移動や歯そのものをわずかに削って歯のサイズを小さくするディスキング法(IPR法、ストリッピング法)で対処できる程度のスペース不足であれば非抜歯で治療を行います。

あらゆる面から診断し、
抜歯の必要性を検討

当院では、以下のような検査を行います。

  • 頭部X線規格写真(レントゲンセファログラム・PA)
  • パノラマX線写真
  • 口腔内写真(5枚)
  • 顔面写真(正面・斜め・側面)
  • 上下顎模型

これらの資料を採得しあらゆる面から分析、診断いたします。その結果、抜歯が必要であれば患者様に説明、同意を得たうえで治療を開始いたします。

健康な歯を抜くことに
抵抗のある方へ

誰だって虫歯でもなく歯周病でもない健康な歯を抜歯するのには抵抗があります。それは矯正医でも同じことです。抜歯が好きな矯正医はいないと思います。根拠もなく健康な歯を抜くことは「抜歯=悪」となってしまいます。

しかし、顎が小さく、骨の長さに余裕がなくデコボコの状態で長年過ごしていたらどうなるでしょう?歯と歯が重なっているところはどうしてもブラッシングが行き届かず虫歯や歯肉炎、歯周炎になってしまいます。そのまま口腔環境が改善しなければ最悪の場合、歯がグラグラしてきて抜け落ちてしまうこともあります。

こういった歯ならびを抜歯して矯正治療してあげることによってブラッシングがしやすくなり虫歯、歯肉炎、歯周炎を予防することができます。そうなると、「抜歯=善」となります。健康な歯を2~4本抜歯はしますが、お口全体の健康を取り戻せると考えると抜歯が必要なケースもある事をご理解いただけるのではないでしょうか。

矯正治療における抜歯論の根拠

インターネットを閲覧していると非抜歯のみで不正咬合を治すことをウリにしている医院も見受けられます。しかし、抜歯か非抜歯かは頭蓋やかみ合わせ、顔貌などあらゆる要素を分析して決めていくべきであると思います。

歴史の話になりますが、1900年ごろE.H.Angle先生が近代矯正学を確立しました。Angle先生は非抜歯で治療を行いました。しかし、多くの患者様を治療していく中で非抜歯では治らない、安定しない症例が多くあったそうです。

そこでC.S.Case先生が咬合と顔貌の調和という観点から抜歯の必要性を唱えます。1911年Angle率いる非抜歯派とCase率いる抜歯派による抜歯論争が展開されます。そののち、頭部X線規格写真が開発され、頭蓋の分析が可能になり顎顔面頭蓋に関する客観的な分析が抜歯論の根拠となりAngleの非抜歯派の理論も次第に消滅していったといわれています。そして、かつてAngleの非抜歯派であったC.H.Tweedらが抜歯派に転向しました。

つまり、頭蓋やかみ合わせ、顔貌のバランスを総合した検査が必要で、その結果、抜歯が必要であれば抜歯ケースとして治療する、必要なければもちろん非抜歯ケースとして治療すべきです。

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